2013年03月12日 統計の教科書 [長年日記]
_ 統計の教科書を公開
2013年度の学部の講義「統計学」で使用するための教科書を公開します.
http://ruby.kyoto-wu.ac.jp/~konami/Text/
このテキストは,今年度まである出版社から出してもらっていたのですが,かなりの訂正と加筆を行い,元の本からはかなり内容が離れてきてしまいました.また出版社も,売れ行きがぜんぜん悪いし,カリキュラムが変わって100人以上いた受講者が30人程度に激減して儲けのタネにならなくなり,書店から引き上げてしまったようです.
そこで,思い切って改訂版はネットに公開して一般の人に自由に使ってもらい,学生が授業で使う分については,小部数印刷の業者に必要なぶんだけ印刷製本してもらうことにしました.なんと2日で製本までやってくれるということで,初回の授業で注文をとってから印刷すれば,次の講義では使えるわけです.便利な世の中です.
どんな教科書なのか
教科書の内容は,いわゆる初等統計学の範囲です.最初に記述統計学を置き,その後確率論をすこしおさらいしてから,標本抽出という確率的処理によって得られるサンプルの統計量に現れる確率分布を扱います.そしてそれを利用して,統計的推定,検定という,古典統計の二大トピックを扱い,最後に線形回帰モデルを導入して終わりです.
数学的には,微積分や線形代数を含まない高校数学の範囲で,しかし可能な限り丁寧に記述しています.それで間に合わないところは,お断りしながら天下りの式を使い,ただしその意味内容についてはきちんと図も多用しながら解説して,式の意味を理解できるようにしたつもりです.そのへんはかなり硬派です.
そういう意味では「文系向け」とはいえ,理系の学部を出た人が統計とはなにかを理解する助けにもなるのではないかと思います.むしろそういう人にはちょうどよいレベルかも知れません.
ちょっと異色で楽しめるところも
確率や統計というものは,私たちの日常生活に縁の深いものでもあるので,そのことを意識して工夫したところもいくつかあります.確率と生き方を考えさせるところとか,統計的検定の意義をひょっこりひょうたん島のみなさんのドラマの形でわかりやすく描いたところとか,その他まあ,他所にはない読み物になっているところがあります.楽しんでやってください.
どんな形で「自由に」使ってよいかという点について
この件はクリエイティブ・コモンズを活用して整理する予定ですが,とりあえず以下のようにしておきます.
自由とはいえ,たとえば営利目的で無断で販売するなど,著作権法を侵害する形で利用することは当然排除されます.
「完全に無条件な自由」なケース
- 個人で勉強や楽しみなどのために使う
この場合には,連絡もクレジットも関係ありません.なお「使う」はダウンロード,ファイルのコピー,印刷,映写等を含みます.
著者に連絡をいただきたいケース
- 学校で講義やセミナーのために使う
- 実費をこえる参加費を徴収しないセミナーや勉強会で使う
利用状況を把握したいので,セミナーの内容(目的,人数,日時,場所)についてメールでお知らせ下さい.また何らかの形で著者を明示してください.
著者の許諾をいただきたいケース
- 企業での研修のために使う
- 営利目的のセミナー等で使う
- 出版する
場合に応じて一定の対価をいただきます.出版についても条件をお問い合わせください.
問題点をご指摘ください
このテキストの改訂はかなり大幅なものになってしまったので,まだミスや欠落があるはずです(手を抜いてできた known bug も実はあります).また,小波の理解不足からくる致命的な間違いが含まれる可能性もあります.
それらについて,メールなどで教えていただけると大変助かります.どうぞよろしく.