研究内容
天体の起源や宇宙で見られる様々な天体現象について、物理学的手法を用いた理論的研究を行なっている。
研究テーマの概要
土星の環の自己重力ウェイク構造
土星の環は遠くからみると一様に見えるが、近くでみると自己重力ウェイク構造という複雑な構造が存在していると考えられている。 自己重力ウェイク構造が形成される仕組みを解明するために、数値シミュレーションによる研究を行っている。

土星の環のプロペラ
1997年に打ち上げられた惑星探査機カッシーニによって土星の観測が行なわれており、土星の環の様々な構造の存在が明らかとなってきた。 最近「プロペラ」という微小構造が発見され注目されている。 これは、数キロ程度のしずくのような形を対称に2つ合わせたような構造で、現在までに数多くのプロペラが見つかっている。 カッシーニによるプロペラの観測結果がシミュレーションによって説明できるか調べている。

シミュレーションで再現されたプロペラ構造。可視化:国立天文台
微惑星形成の数値シミュレーション
微惑星とは、原始太陽系に数多く存在したと考えられているキロメートル程度 の天体である。惑星系形成の標準理論では、惑星形成過程の初期に存在 していた基本的な天体として考えられており、その起源の解明は重要な問題である。 しかし、この微惑星がどのように形成されたかは、これまでのところよく理解されていない。 微惑星形成過程には様々な仮説があるが、特に重力不安定による微惑星形成説に着目し、微惑星の形成過程を調べている。


微惑星形成のシミュレーションの例
惑星系形成初期の乱流
惑星形成の初期段階では乱流の効果が重要であると考えられている。 激しい乱流が存在すると微惑星の元となる塵(ダスト)がかき混ぜられて 乱流拡散が生じる。 乱流の発生メカニズムや惑星形成への影響について調べている。

流体不安定(ケルビンヘルムホルツ不安定)によって発生した渦。非線形段階に達したとき乱流となる
乱流中の塵の集積
太陽系や惑星系の形成初期には、無数のミクロン程度の大きさの塵(ダスト)が存在しており、これらが集積・成長し惑星へと成長した。 これまでの研究で、惑星形成初期に乱流が存在しており、塵が集積できない可能性が指摘されている。 そこで、乱流でかき混ぜられてた塵の集団の長期進化を調べ、塵が濃集されることをこれまでに明らかにした。 しかし、濃集が起きた後に惑星がどのように形成されるかはよく分かってない。 このメカニズムが惑星形成に与える影響を調べている。

長期進化による濃集の例
銀河渦状腕の形成
数多くの銀河は渦状の腕をもっており、銀河によってその巻き付きの度合いが異なる。腕の巻き付きの度合いは 「ピッチ角」で定義される。このピッチ角が何で決まるか調べた。その結果、ピッチ角は、銀河の回転速度の変化率(速度剪断率) と密接な関係があることが分かった。
現在さらに研究を進め銀河の腕の形状が理論的にどう決まるか調べている。

(Credit: NASA, ESA, and the Hubble Heritage (STScI/AURA)-ESA/Hubble Collaboration)