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【小波の京女日記】


2015年01月17日 「放射線被曝の理科・社会」

_ 「放射線被曝の理科・社会」を読んだ.

とてもまっとうな本に出会ったので,理科教育MLに読後感を書いた.以下に転載.

暮の12月20日発行のこの本を読みました.

児玉一八・清水修二・野口邦和 著 「放射線被曝の理科・社会」 かもがわ出版 http://www.kamogawa.co.jp/kensaku/syoseki/ha/0743.html

この本は,福島における放射能汚染の実態や,農作物等に関する検査結果 などのデータを克明に記述しており,2014年末までにおける原発事故の 影響を正確に捉えるだけでも,非常に貴重な本であると思います.

タイトルにある「理科・社会」は,国民の基礎知識としてこれだけは おさえてほしいという意欲を感じさせるもので,それを読んだ上で 自分なりの判断をしてほしいということが随所に書かれています.

本の内容は,生物化学,経済学,放射化学の専門家がそれぞれの専門を踏ま えて,福島事故による放射線に関連する諸問題を詳しいデータとともにきち んと,そしてあまりに難しくならないように配慮して,書いています.執筆 にあたって,著者たちは単純に分担せずよく原稿を読み合って,議論しなが ら本が作られたことがよくわかります.なお,清水修二さんは福島大学経済学 部の教授,副学長を歴任された方で,現在でも東北地方を中心に精力的な 講演活動を続けています.

事故から4年近くもたったこの時期に,どうしてこのタイトルの本が 書かれたかという動機のひとつとして,昨年4月にマンガ「美味しんぼ」 で放射線被曝によって鼻血が出たという記述が大きく社会問題になった ことがあるそうです.私もこの問題では「何をいまさら」と放射線に よる傷害に関する科学的無知に呆れ返り,かつ漫画家,元町長,大学 教員の無責任な発言がどれだけ多くの人々を苦しめる結果になったか, 強い憤りを感じたものです.その問題について書かれた章はとくに 読むに値するものです.

なお,この著者たちは,原発を廃止すべきだという立場を明確にしており, その上で,科学的真実は立場によらず共有すべきものであり,この本は その部分を提供するのだというスタンスが述べられています.また,科学 的に誤った言説を振りまく反原発の動きについても批判の目が向けられて います.良心的な著作として,これは多くの人に,とくに教育に携わる 人に読まれるべき本と考えて,みなさんにおすすめします.